日本代表、夢と感動をありがとう!

前回大会

 

思えば2014年。

 

「自分たちのサッカー」で優勝を目論むザックジャパンは、オランダ・ベルギーなど強豪国を次々と下し、

本田を筆頭に明確な「優勝」の意識を植え付けた。

 

ところが。

意気揚々と乗り込んだワールドカップ・ブラジルの地では、よもやのグループリーグ敗退。

パスサッカーはおろか、本田が決めた先制点以降は鳴りをひそめ、「自分たちのサッカー」なぞ出来ずに散った。

 

 

 

監督交代

 

そこから、現コロンビア代表監督ペケルマンの招集も視野に入れながら、

最終的にはこちらもまた名将アギーレ監督が誕生した。

 

しかし、当の本人の不祥事(?)により、ご存知ハリルホジッチ監督へとバトンタッチされることになった。

先のブラジル大会で、弱小アルジェリアを見事な指揮で好成績を残した彼は、

「デュエル」「縦に速いサッカー」を選手に植え付けようとする。

 

 

しかし、思うような「目に見えた」結果が出ず、ロシア大会を2か月前にして解任される。

当時、ACミランからパチューカ都落ちした本田が招集されない可能性があり、

これを良く思わない協会ないしスポンサーの圧力があって「本田が解任させた」のではないかと批判が集中しました。

 

当の本人も、パチューカで成績を残すも所詮メキシコリーグ。

直前の強化試合でも、トップ下スタメンを任されながら結果を出せず、さらにスピード感を増した現代サッカーにおいて、スピードのない本田が足かせになっていると大きな批判が起きた。

 

ハリルホジッチの後任は、ハリルホジッチ+日本らしさをアクセントとして加えると語る、Jリーグから離れて監督がご無沙汰となっていた西野監督が選ばれた。

日本代表の強化部長のポストだった彼は、(結果が出ない原因とされた)ベテランを重宝し、

見える結果を出した中島を外すなど(唯一の希望とされていた)若手を除外し、

さらには先に述べた本田を中心に据えるという戦術を取るなど、非難轟々であり好意的に見る目はほとんどなかった。

 

かくいう僕も、西野監督が語る「日本らしさをスパイスに入れる」という内容が良く聞こえるが、単なる口だけではないか?という疑問もあった。

本田も強化試合で衰えを感じて、正直擁護派だったと思うがそれでも「スタメンは外して・・・」と思っていた。

 

 

 

ワールドカップ直前

 

最後の強化試合で、本田を外したことで香川や乾が躍動。スピード感が増した内容で少し希望が持てたが、

依然「グループリーグ3連敗」「恥を晒すな」「ワールドカップ出場権を他国に譲れ」という世論がほとんどだった。

 

正直、その気持ちは分かったし、批判されて然るべきこれまでの経過だった。

でも、もう本戦は目の前に控えている。どちらかというと、冷めた目で密かに期待するというスタンスの人が僕だけじゃなく多かったのでは?

 

 

そんな中、長友はスーパーサイヤ人よろしく金髪に染め上げ、仲間を鼓舞し叱咤激励する様子がメディアに取り上げられ話題になる。

「おじさん」扱いし、時には炎上することもあった(というか、ほぼ炎上していた?)。

 

本田は、まるで監督かのごとく戦術を語り出し、

「本田動け」「本田外せ」「本田帰れ」のコールが止まらない。

ツイッターだけではない。検索エンジンGoogleですら、「本田」をサーチすればネガティブな内容ばかりが表示される。

もはや、結果を出すしかない・・・すべての批判を受けているかのような状態だった。

 

 

そして、ワールドカップが開幕される。

 

 

 

 

ワールドカップ本戦

 

初戦はコロンビア。

前回大会でチンチンにやられ、スター選手も多くレベルの高い南米予選を勝ち上がってきた「シード国」だ。

 

もちろんというばかりに、戦前の予想は「負け」「引き分ければ奇跡」「勝つことは無理」という評判が先行していた。

 

しかし、ホイッスルが鳴り5分も経たないうちに、屈強なディフェンスをかいくぐる大迫の見事なポストプレーからのシュートがあった。

そのシュートはゴールキーパーファンブルし、批判のあった本田を押し退け先発出場した香川の元へ。

香川はためらないなくダイレクトでシュート。そのシュートは枠に収まっていると見るや、コロンビアDFがたまらず手を出してしまう。

 

PKの判定。しかもレッドカード(退場)のおまけ付き。

 

11人対10人というのは、相当負荷が軽くなる。

野球に例えれば1人守備がいない、将棋に例えれば開始から駒落ち戦、スプラトゥーンに例えれば相手が3人、バンドで例えればベースやドラムがない。

 

こんな状況下で、さらに1点もらえるビッグチャンスが訪れた。あの「勝てない」と言われた日本が、いきなりリードをもらえる展開となった。

サポーターの大半がコロンビアカラーの黄色に染まりブーイングがこだます中、キッカーの香川は冷静だった。

ほぼど真ん中に蹴り込み、日本に先制点をもたらした。

 

批判してた人、諦めムードで見てた人、世論関係なく応援してた人、ノリで見てる人。

日本に期待してる人みんなが、「もしかしたら・・・いけるんじゃね!?」

希望が持てる先制点となった。

 

 

 

快進撃

 

PKを皮切りに、日本は躍動した。

 

コロンビア戦、先制しながら数的優位ながら地力の差でコロンビアに押し込まれ、同点に追い付かれる。

しかし後半、日本はパスサッカーを選択した。

批判を一身に浴びた本田が蹴ったコーナーキックは半端ない大迫の頭を目がけ、大迫は練習通りに必死にボールに食らいつき勝ち越しのゴールネットを揺らした。

視聴率も50%を超え、日本中が勝利に酔いしれる。

 

セネガル戦。川島の唖然とするパンチングがマネに当たり先制を許すが、すぐさま柴崎の素晴らしいフィードから長友の素晴らしいトラップそして乾のセクシーなシュートで追い付く。

再びセネガルにリードされるが、途中出場の岡崎が潰れ役となりこれまた途中出場で尚批判を浴びる本田の元へ転がったボールが、3大会連続ゴールを呼ぶ同点弾に変わった。

リードされても食らいつく日本代表、そしてあれだけトレーニングしてワールドカップを迎えながら批判を浴び続けて「不要」呼ばわりされた本田が決めた。自然と涙腺が緩んだ。

 

ポーランド戦。メディアによるスタメンバラシはあったが、奇襲といえるスタメンほぼ入れ替えで望む。

結果として負けたが、途中経過でコロンビアが勝っている情報を仕入れた西野監督は、負けているにも関わらずボール回しの作戦に出る。

セネガルが追いついたら、ポーランドに一撃を喰らったら、「たられば」が付くギャンブルは議論を醸し出したが、結果として決勝トーナメント進出が決まった。

 

 

決勝トーナメント

 

直前に行われたフランス4-3アルゼンチンの撃ち合いもあり、レベルがかなり増した決勝トーナメント。

ポーランド戦のボール回し戦術にバッシングを受けたこともあり、戦前はチェルシーの要クルトワアザールやビエリを彷彿とさせるルカク、好調シティ在籍のデ・ブライネなど錚々たるメンツの赤い悪魔ベルギーが圧倒的に優勢との声が大きかった。

 

しかし試合がはじまり、日本はベルギーの攻撃を凌ぐ。そもそもファーストシュートは日本・香川だった。引かずに「撃ち合う」ことを宣誓した。

前半なんとかスコアレスで折り返し、迎えた後半。

開始早々、柴崎の絶妙なスルーパスに抜け出したのは原口。中を意識する動きがフェイントとなり、ファーサイドをぶち抜くシュートを決めてまさかの先制点。

数分後、香川のボールタッチで空けたスペースに、香川からパスを受けた乾が無回転ミドルを放ち、見事なコースに吸い込まれ2-0。

日本がベルギーに打ち勝っている。しかし、やはりベルギーは強かった。

アザールを中心に押し込みを図り、気付けば2-2の同点。

アディショナルタイム。本田のフリーキックが枠内に入り、キーパーがなんとか弾くがコーナーキック。コロンビア戦と同じサイド。延長、PKを見据えない戦いで「決まる」予感がする。

 

しかし、本田のコーナーキッククルトワがキャッチ。そこからまさかのカウンター。鋭いカウンターはゴールからゴールまでわずか9秒だったという。

途切れない数的不利を受けたカウンターアタックは、試合終了を告げる逆転ゴールとなった。

 

 

日本のワールドカップは、終わった。

 

 

ワールドカップを終えて

 

1勝1分2敗。

 

数字で見ればやや物足りない成績だった。

前評判を思えば「よくやった」と思えるかもしれないけど、結局勝ったのは10人のコロンビア戦のみ。

 

けど結果以上の、愛称を使えば「サムライ」の魂を持ったブルーのユニフォームは僕たちにいろんなものを与えてくれた。

 

 

ミスがなかったとは言えないけど、なんとかしようとした川島。

 

安定感がないと言われながら、安定したディフェンスを牽引した吉田。

 

Jリーガーながら海外の猛者とクレバーに戦った昌子。

 

ウィークポイントと思っていたのに、いつの間にかマルセイユで素晴らしい成長をしていた酒井ゴリ。

 

スーパーサイヤ人になって、ピッチ外で盛り上げピッチ内でも一番動いていたのがおっさんだった長友。

 

キャプテンシーを遺憾なく発揮した長谷部。

 

遠藤の後継者とまで呼ばれるダイナモとなった柴崎。

 

慣れない右サイドでも、運動量と内に秘める熱さは一番だった原口。

 

セクシーに、かつテクニカルだけじゃない運動量も見せた乾。

 

日本代表の10番、香川。

 

半端ないヘディング、半端ないポストプレーで攻撃を牽引した大迫。

 

ジョーカーとして、時にはピッチ外で熱弁と指示を与えた本田。

 

他にも出場機会が少なくても、「魂」を見せてくれた選手たち。

 

最後に、ハリルホジッチから受け継いで日本らしさのスピリットを復活、見事に指揮した西野監督

 

 

これまで5大会すべてワールドカップを見てきて、親善試合もおそらくほぼすべて見てきたけど、

この大会が一番「勝つんだ」っていう気迫が見られて、その上で戦術・プレーの質の高さが見られたと思う。

 

技術が高いからとフリーランを疎かにして、足元のパスばかり、シュート狙えるのに確率を意識したアシスト狙いでチャンスを逸する

そんな日本代表ではなかった。

 

 

コロンビアの攻撃を守ったのが頼もしかった吉田

 

敗戦後、ピッチを叩いて人目をはばからず悔しがった昌子

 

ハイボールの対応、ディフェンス、攻めのオーバーラップ、クロスすべてに安定していた酒井ゴリ

 

クアドラードを抑えてガッツポーズした長友

 

3バック気味に試合をコントロールした長谷部

 

クールなプレーやパスに似合わない、クロスが上がってくるのを狙って全力でスプリントしていた柴崎

 

試合が終わって立ち上がれないほど動いていた原口

 

ボールを持つと必ず仕掛けて、必ず得点の予感をさせた乾

 

地味に走り、バイタルエリアに入れば期待しかなかった香川

 

センターフォワードなのに(なぜか戻っていて)ハメスのシュートをブロックして、仲間に注意していた大迫

 

セネガル戦で先制点を取られ「落ち着いて」と周りにジェスチャーした本田

 

 

目立たないプレーが僕の記憶に蘇る。

ゴールに感動する。

もっとこのメンバーで見ていたかった。

 

 

選手も、もう整理はついている。代表引退など、新たな道へ進み出している。

僕もそろそろ切り替えよう。

この続きは、4年後へ。

 

 

 

日本代表、夢と感動をありがとう!